犬山城(愛知県)完全ガイド|国宝天守の歴史・見どころ・アクセスを徹底解説
犬山城とは|概要と基本情報
犬山城(いぬやまじょう)は、愛知県犬山市にある日本を代表する名城です。木曽川沿いの標高約40メートルの丘陵に築かれた平山城で、別名「白帝城」とも呼ばれています。
天守は現存する日本最古の様式を持つとされ、国宝に指定されている全国わずか5城のうちの1つです。室町時代の天文6年(1537年)に織田信長の叔父である織田信康によって築城されたと伝えられ、約480年以上の歴史を誇ります。
基本情報
所在地:愛知県犬山市犬山北古券65-2
城郭構造:平山城
天守構造:望楼型 三層四階地下二階
築城年:天文6年(1537年)頃
築城主:織田信康
主な城主:織田氏、石川氏、成瀬氏
文化財指定:
- 天守:国宝(昭和27年指定)
- 城跡:国の史跡(平成18年指定)
営業時間:9:00~17:00(最終入場16:30)
休城日:12月29日~31日
入場料金:
- 一般・大学生:550円
- 小・中学生:110円
犬山城の位置と地理的重要性
犬山城は尾張国(現在の愛知県)と美濃国(現在の岐阜県)の国境に位置し、木曽川を天然の堀として活用した要衝の地に築かれています。濃尾平野の扇の要にあたるこの場所は、軍事上・経済上・交通上の重要拠点でした。
木曽川は中山道と木曽街道を結ぶ交通の要所であり、この川を押さえることは尾張と美濃の両国を支配する上で極めて重要でした。天守最上階からは木曽川の流れ、濃尾平野、遠くは御嶽山や岐阜城まで一望でき、その戦略的価値の高さを今でも実感できます。
犬山城の歴史・年表
室町時代:築城から戦国の動乱へ
天文6年(1537年):織田信長の叔父・織田信康が、それまでこの地にあった砦を改修して犬山城を築城したとされています。ただし、築城年については諸説あり、永正年間(1504-1521年)に織田広近が築いたという説も存在します。
永禄7年(1564年):織田信清(信長の従兄弟)が城主となるも、後に信長と対立し美濃へ逃亡。犬山城は織田信長の支配下に入ります。
天正10年(1582年):本能寺の変後、織田信雄の家臣・中川定成が城主となります。
天正12年(1584年):小牧・長久手の戦いでは、豊臣秀吉方の拠点として池田恒興らが入城。この戦いで犬山城は激しい攻防戦の舞台となりました。
江戸時代:成瀬家の治世
慶長5年(1600年):関ヶ原の戦い後、石川光吉が城主となります。
元和3年(1617年):尾張藩附家老の成瀬正成が城主となり、以後明治維新まで成瀬家が9代にわたって城主を務めました。この時期に城郭の整備が進み、現在見られる縄張りの基本形が完成しました。
江戸時代中期:城下町が発展し、商業・文化の中心地として繁栄しました。
明治時代から現代へ
明治4年(1871年):廃藩置県により廃城となります。
明治24年(1891年):濃尾地震により天守や櫓が損壊。修復の条件として、成瀬家に無償譲渡されました。
昭和10年(1935年):天守が当時の国宝保存法に基づき国宝(旧国宝)に指定されます。
昭和27年(1952年):文化財保護法に基づき、改めて国宝に指定されました。
平成16年(2004年):財団法人犬山城白帝文庫の所有となり、個人所有から公益法人所有へと移行しました。それまで全国でも珍しい個人所有の城でした。
平成18年(2006年):城跡全体が国の史跡に指定されました。
歴代城主の変遷
犬山城は約480年の歴史の中で、目まぐるしく城主が交代しました。主な城主を時代順に紹介します。
織田氏時代
織田信康(天文6年~):築城主。織田信長の叔父にあたる人物で、犬山城を戦略拠点として整備しました。
織田信清(永禄7年~天正元年):信長の従兄弟。後に信長と対立し、武田氏を頼って甲斐へ逃亡しました。
豊臣政権下
中川定成:織田信雄の家臣として城主を務めました。
池田恒興・元助父子:小牧・長久手の戦いで豊臣方の拠点として入城しましたが、元助は戦死しました。
江戸時代:石川氏と成瀬氏
石川光吉(慶長5年~元和2年):関ヶ原の戦い後、家康により犬山城主に任じられました。
成瀬正成(元和3年~寛永10年):尾張藩附家老として入城。以後、成瀬家が9代にわたり城主を務めました。
成瀬家歴代城主:
- 成瀬正成
- 成瀬正虎
- 成瀬正親
- 成瀬正幸
- 成瀬正住
- 成瀬正寿
- 成瀬正典
- 成瀬正住(8代)
- 成瀬正肥
江戸時代を通じて成瀬家が城主を務めたことで、犬山城は比較的安定した統治が行われ、城下町の発展にも寄与しました。
天守の建築的特徴と見どころ
現存最古の天守
犬山城天守は「現存12天守」の中でも最も古い様式を持つとされています。望楼型天守の典型例であり、三層四階地下二階の構造を持ちます。外観は三層ですが、内部は四階建てとなっており、最上階には廻縁(まわりえん)と呼ばれる展望用の回廊が設けられています。
天守の建築年代については諸説ありますが、現在の天守は天文6年(1537年)の築城時の構造を基礎とし、その後増改築を経て現在の姿になったと考えられています。特に最上階の廻縁部分は後世の増築とされています。
望楼型天守の構造
犬山城天守は望楼型と呼ばれる古い様式の天守です。望楼型とは、入母屋造の建物の上に望楼(物見櫓)を載せた形式で、後の層塔型天守とは異なる構造を持ちます。
地階:石垣の中に埋め込まれた部分で、武具などの貯蔵に使われました。
一階:城主の居室や納戸として使用された空間です。
二階:武者走りと呼ばれる部屋があり、武者が待機する場所でした。
三階:破風の間と呼ばれ、唐破風や入母屋破風の内部空間となっています。
四階(最上階):廻縁が設けられた展望階で、四方を見渡せる構造になっています。ここからの眺望は絶景で、木曽川、濃尾平野、御嶽山、岐阜城、名古屋方面まで一望できます。
建築様式の特徴
唐破風と入母屋破風:天守には南面と北面に唐破風、東面と西面に入母屋破風が設けられており、優美な外観を作り出しています。
廻縁:最上階を取り囲む廻縁は、後世の増築と考えられていますが、犬山城天守の大きな特徴となっています。高欄(手すり)は低く、現在は安全のため金網が張られていますが、開放感のある眺望が楽しめます。
石落とし:天守の各所に石落としが設けられており、防御機能を備えています。
狭間(さま):壁面には鉄砲狭間や矢狭間が設けられ、実戦を想定した造りとなっています。
木造建築の魅力
犬山城天守は木造建築ならではの魅力に溢れています。柱や梁には当時の木材がそのまま使用されており、年月を経た木材の質感や色合いが歴史の重みを感じさせます。急な階段(梯子に近い角度)は当時の建築様式を今に伝えており、訪問者は戦国時代の雰囲気を肌で感じることができます。
国宝指定と文化財としての価値
国宝五城の一つ
現在、天守が国宝に指定されている城は全国でわずか5城のみです:
- 犬山城(愛知県)
- 松本城(長野県)
- 姫路城(兵庫県)
- 彦根城(滋賀県)
- 松江城(島根県)
犬山城はこの中でも最も古い様式を持つとされ、建築史上極めて重要な文化財です。昭和10年に当時の国宝保存法に基づき旧国宝に指定され、昭和27年に文化財保護法に基づき改めて国宝に指定されました。
現存12天守
江戸時代以前に建造され、現在まで天守が残っている城は全国で12城しかありません。犬山城はその貴重な現存天守の一つであり、さらに国宝指定を受けている点で、文化財としての価値は計り知れません。
国の史跡指定
平成18年(2006年)には、天守だけでなく城跡全体が「犬山城跡」として国の史跡に指定されました。これにより、天守を含む城郭全体が保護対象となり、将来にわたって保存されることが確実となりました。
犬山城の遺構・文化財
現存する遺構
天守:国宝に指定されている現存天守。三層四階地下二階の望楼型天守で、室町時代から江戸時代初期の建築様式を今に伝えています。
石垣:天守台をはじめとする石垣が良好な状態で残っています。野面積みから打込接ぎへの過渡期の技術が見られ、石垣の発展過程を知る上で貴重な資料です。
土塁:城郭の一部に土塁が残存しており、往時の縄張りを偲ばせます。
堀跡:一部に堀の痕跡が確認できます。
失われた遺構
明治維新後の廃城令や濃尾地震により、多くの建造物が失われました:
櫓:天守以外に複数の櫓が存在しましたが、現存していません。
門:本丸門、黒門など複数の門がありましたが、現在は残っていません。
御殿:本丸には御殿が存在しましたが、明治時代に取り壊されました。
犬山城白帝文庫
平成16年まで成瀬家が個人所有していた犬山城は、現在は公益財団法人犬山城白帝文庫が所有・管理しています。白帝文庫では犬山城に関する貴重な資料や文化財を保管しており、城の歴史研究に重要な役割を果たしています。
観光施設としての犬山城
天守見学の魅力
犬山城天守の内部は一般公開されており、実際に最上階まで登ることができます。各階には当時の城の様子を伝える展示があり、武具や調度品のレプリカなども展示されています。
最大の魅力は最上階の廻縁からの眺望です。木曽川の雄大な流れ、濃尾平野の広がり、天気が良ければ遠く御嶽山や岐阜城、名古屋の高層ビル群まで見渡すことができます。この360度のパノラマビューは、まさに絶景と呼ぶにふさわしいものです。
城下町散策
犬山城の魅力は天守だけではありません。城下には江戸時代の風情を残す町並みが保存されており、「犬山城下町」として人気の観光スポットとなっています。
本町通り:古い町家が建ち並ぶメインストリートで、食べ歩きグルメや土産物店が軒を連ねています。
どんでん館:犬山祭の山車を展示する施設で、精巧なからくり人形を見学できます。
文化史料館:犬山の歴史や文化を紹介する施設です。
周辺の観光スポット
木曽川うかい:夏季には木曽川で鵜飼が行われ、伝統的な漁法を見学できます。
日本モンキーパーク:犬山城近くにある遊園地で、家族連れに人気です。
博物館明治村:明治時代の建築物を移築・保存する野外博物館で、犬山市内にあります。
リトルワールド:世界の家と暮らしをテーマにした野外民族博物館です。
有楽苑:国宝茶室「如庵」を有する日本庭園です。
犬山城へのアクセス
電車でのアクセス
名鉄犬山線利用:
- 名鉄名古屋駅から名鉄犬山駅まで約25分(特急利用)
- 犬山駅から徒歩約20分
- または犬山遊園駅下車、徒歩約15分
名鉄各務原線利用:
- 名鉄岐阜駅から犬山遊園駅まで約30分
- 犬山遊園駅から徒歩約15分
車でのアクセス
名古屋方面から:
- 名神高速道路小牧ICから国道41号経由で約25分
- 中央自動車道小牧東ICから約25分
岐阜方面から:
- 東海北陸自動車道岐阜各務原ICから約20分
駐車場:
- 犬山城第1駐車場(有料)
- 犬山城第2駐車場(有料)
- 城下町周辺に複数の有料駐車場あり
バスでのアクセス
犬山駅から犬山城・城下町方面へのコミュニティバスも運行されています(土日祝日のみ運行の場合あり)。
見学時の注意点とおすすめの楽しみ方
見学時の注意点
階段が急:天守内の階段は非常に急で、梯子に近い角度です。スカートやヒールは避け、動きやすい服装と靴で訪問することをおすすめします。
混雑時期:桜の季節(3月下旬~4月上旬)、ゴールデンウィーク、紅葉の季節(11月)は特に混雑します。平日や朝の早い時間帯の訪問がおすすめです。
天候:雨天時は廻縁への出入りが制限される場合があります。晴天時の訪問がおすすめです。
所要時間:天守見学のみで約30~40分、城下町散策を含めると2~3時間程度が目安です。
おすすめの楽しみ方
早朝訪問:開城直後の時間帯は比較的空いており、ゆっくりと見学できます。
夕暮れ時の眺望:最上階からの夕日は格別です。閉城時間に注意しながら、夕暮れ時の訪問もおすすめです。
城下町とセット:犬山城見学と城下町散策をセットで楽しむことで、一日たっぷりと犬山を満喫できます。
季節のイベント:桜の季節、犬山祭(4月)、紅葉の季節など、季節ごとに異なる魅力があります。
対岸からの眺め:木曽川の対岸(岐阜県側)から犬山城を眺めるのもおすすめです。川と城の美しい景観を楽しめます。
犬山城の四季
春:桜と犬山祭
3月下旬から4月上旬にかけて、犬山城周辺では約400本の桜が咲き誇ります。天守と桜のコントラストは絶景で、多くの観光客が訪れます。
4月第1土曜日・日曜日には「犬山祭」が開催されます。国の重要無形民俗文化財に指定されているこの祭りでは、精巧なからくり人形を載せた13輌の山車が城下町を練り歩きます。夜には各山車に365個の提灯が灯され、幻想的な雰囲気に包まれます。
夏:新緑と木曽川うかい
初夏の新緑に包まれた犬山城も美しい景観を見せます。6月から10月にかけては木曽川で鵜飼が行われ、伝統的な漁法を見学できます。夜の鵜飼では、ライトアップされた犬山城を川から眺めることができ、昼間とは異なる幻想的な雰囲気を楽しめます。
秋:紅葉の季節
11月には城周辺の木々が紅葉し、天守と紅葉の美しいコントラストを楽しめます。最上階からの眺望も、紅葉に彩られた濃尾平野が一望でき、特に美しい季節です。
冬:雪化粧の犬山城
雪が降った日の犬山城は、まさに水墨画のような風情を見せます。特に木曽川対岸からの雪化粧した天守の眺めは格別です。冬は観光客も比較的少なく、静かに見学できる季節でもあります。
犬山城の撮影スポット
おすすめ撮影ポイント
木曽川対岸(岐阜県側):川と城を一緒に撮影できる定番スポットです。特に夕暮れ時の撮影がおすすめです。
針綱神社からのアプローチ:城へ向かう参道からの天守の眺めは、木々の間から見える天守が美しく、人気の撮影スポットです。
本丸からの天守:石垣と天守を一緒に撮影できます。
城下町から:町並みの向こうに見える天守を撮影すると、城下町の雰囲気も伝わる写真になります。
天守最上階から:360度の眺望を活かした風景写真が撮影できます。
まとめ:犬山城の魅力
愛知県犬山市にある国宝犬山城は、現存最古の天守を持つ日本を代表する名城です。室町時代の天文6年(1537年)に築城されて以来、約480年にわたって木曽川のほとりに佇み、尾張と美濃の国境を見守ってきました。
国宝五城の一つであり、現存12天守の中でも最も古い様式を持つ犬山城は、建築史上極めて重要な文化財です。望楼型天守の典型例として、三層四階地下二階の構造を持ち、最上階の廻縁からは木曽川、濃尾平野、御嶽山、岐阜城まで一望できる絶景が広がります。
織田氏、石川氏、成瀬氏と続いた歴代城主の歴史、小牧・長久手の戦いなど戦国時代の激動の舞台となった歴史、そして平成16年まで個人所有だったという全国でも珍しい経緯など、犬山城には多くの魅力と物語が詰まっています。
天守見学だけでなく、城下町散策、木曽川うかい、周辺の観光施設など、一日たっぷりと楽しめる犬山城。名古屋から電車で約25分というアクセスの良さも魅力です。
日本の城郭建築の原点とも言える犬山城を訪れ、その歴史と美しさを肌で感じてみてはいかがでしょうか。四季折々の表情を見せる国宝の天守が、訪れる人々を温かく迎えてくれることでしょう。